ある大晦日のカウントダウン・パーティーの2時間前から、ホテル(『HOTEL AVANTI』は、セットで造られた架空のホテル。どこかのホテルのロケではありません)で起きた出来事がリアルタイムに描かれていきます。主要人物だけで総勢25名!
この映画のように、特定の場所を舞台にして、複数の登場人物のドラマを平行して、あるいは交差させながら描く形式を『グランドホテル形式』というそうです。
三谷幸喜監督は、火事の起こらない『タワーリング・インフェルノ』を作ろうと思ったそうです。なるほど……。
初めて観る人は、推理ドラマとして観てもいいかも知れません。
まあ、どういう謎かということさえもネタバレになりそうなので書けませんが。だからまず謎を探さなきゃいけない。結構最初から伏線も張ってあるんですが、私は最後になって謎が解けてからやっとはたと膝を打ってしまいました(いや、心の中でですけど)。
それぞれの登場人物に、色色な謎があるんですよね。それが最後に『実はこういうことでした』とわかるようになっている。うまいですねぇ。
2回目以降に観るときは、謎の答がわかっている訳ですから、謎解きは1回目にしか楽しめないでしょう? まあ、たくさんある伏線を探すとか、新堂平吉(役所広司)のネームプレートとか、武藤田勝利(佐藤浩市)が食べた物とか、バックに映る総支配人(伊東四朗)とか、2回目以降に観る楽しみはたくさんありますが。
戸田恵子のさりげない雰囲気の演技がすごくよかったです。
オダギリジョー、唐沢寿明、津川雅彦、近藤芳正の特殊メイクも面白い。
役所広司は、最初のイメージからドンドンずれていって(これは監督の演出がそうなっていたようですが)、あれ?あれ?って感じがしました。僕的にはちょっと、って感じでした。
面白いのは間違いないんだけど、観るのもリアルタイムがよかったなあ。年末の雰囲気の中か、せめて正月気分のときに。2月に入ってから観ても、なんだか気分が盛り上がらない。
いや、なんか、文句が多くなってしまいましたが、みんな何かに挫折して、でも最後はまた、本当の自分に戻って、夢に向かって歩き出す、そんなメッセージが嬉しい。
ばらばらの出来事、登場人物を個別に描きながら、一つの終結にもっていく「グランドホテル形式」へのこだわりと、上映時間とストーリー進行時間のシンクロを試みていますが、伏線張りまくって、ラストに気持ち良く収束させるという目論見は成功しており、「お見事!」と言っていい脚本だと思います。
物語は、登場人物それぞれのエピソードを紹介しつつ、ナンセンスなギャグを挟みながら、ユルユルと進んでいく。それが、いいというのは解からないでもないけど、ギャグも笑えないのが多かったし、登場人物が多すぎて、上手くまとめたというのはあるものの散漫な印象は残った。
ワンシーンワンカットの多用も、舞台劇的なものを狙ったのでしょうが、必ずしも成功しているとは思えないし、例えば、ドラマが始まって少ししてからの、香取慎吾を中心とした従業員室での長回しなんて、何の効果を狙っているのか不明。カット割した方が、断然、テンポも画面の迫力も増すはずのシーンでもワンカットで押し通すのは、監督がただ単に技法にこだわりすぎているだけのような気がします。効果的に使ってこその、テクニックであるはず...。ただ、ラスト近く、松たか子が長セリフで佐藤浩市に文句を言うシーンの長回しは良かった。
とにもかくにも、出るわ、出るわの豪華キャスト。役所広司、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、篠原涼子、戸田恵子、生瀬勝久、麻生久美子、YOU、オダギリジョー、角野卓造、寺島進、浅野和之、近藤芳正、川平慈英、堀内敬子、梶原善、石井正則、榎木兵衛、奈良崎まどか、原田美枝子、唐沢寿明、津川雅彦、伊東四朗、西田敏行と、揃えも揃えたり。それぞれの俳優の、個性的な演技や歌などを楽しむ面白さは、十分すぎるほどありましたね。
映画の作成方式に「グランドホテル方式」というのがあります。名作「グランドホテル」に由来していますが、三谷さんは、明らかにこの名作にインスパイアされ、オマージュを捧げています。
ホテルという種々雑多な人間が集まる場所を舞台に、様々な人間模様が描かれていますが、そこは三谷さん、なかなかのコメディに仕上げています。
主役の役所さんを始め、演技者の魅力を上手く引き出しており、かなり笑えました。
また、支配人役の伊東四朗や大物歌手役の西田敏行はさすがの存在感です。笑えます。


